Rail transport

鉄道貨物輸送

 

ばら積み貨物やコンテナ貨物を鉄道網を通じて運ぶ輸送手段を鉄道貨物輸送と呼びます。大量輸送が可能で、輸送の信頼性が高いことが強みです。輸送量・輸送距離当たりのCO₂排出量は、トンキロ当たりで長距離トラック輸送の最大6分の1とされ、環境面でも優れています。

Keepeek
Portique de manutention au Terminal de transport combiné Delta 3

鉄道貨物市場の規模と今後の展望

 

市場調査会社Research & Marketsによると、2024年の世界の鉄道輸送市場は5,250億米ドル規模で、貨物輸送がその半分強を占めています。鉄道輸送市場全体は、脱炭素政策の推進、生産拠点を消費市場の近くに移すニアショアリング、複数の輸送手段を組み合わせるインターモーダル輸送の拡大を背景に成長が見込まれています。同社の予測では年平均成長率は6.2%で、2034年には約9,320億米ドルに達するとされています。

国際鉄道輸送に必要な書類

 

  • CIM貨物託送状(CIM Consignment Note):COTIF条約のCIM統一規則に基づき、運送契約の成立や内容を証する書類です。電子形式のe-CIMも利用されています。輸送区間によっては、SMGS貨物託送状やCIM/SMGS共通貨物託送状が用いられます。
  • 商業インボイス・パッキングリスト:貨物の価格、品名、HSコード(品目分類番号)、梱包内容、重量などを記載する書類です。
  • 危険物輸送書類(RIDに基づくもの):危険物を輸送する場合に必要となる書類です。RIDは、海上輸送のIMDGコードや道路輸送のADRに相当する鉄道の危険物輸送規則です。
  • 原産地証明書・検疫証明書など:輸出入国の要件や貨物の種類に応じて用意します。


CIM貨物託送状の電子化により、手入力削減と関係者間のデータ連携が実現し、通関手続きがさらに効率化します。

鉄道貨物輸送における品質・環境KPI

 

  • 定時運行率(OTP):所定の時間内に出発・到着した便の割合を示す指標です。90%以上が優良な基準値とされています。
  • ターミナル滞留時間(Dwell Time):貨物やコンテナがターミナルに滞留する時間です。港湾と鉄道の接続拠点で24時間未満が目安となります。滞留が長引くと、貨車やコンテナの回転率が低下します。
  • 貨物損傷率(Damage Ratio):輸送中に損傷した貨物や輸送ユニットの割合です。インターモーダル(複合一貫輸送)では、0.2%未満に抑えることが求められます。
  • CO₂排出原単位(g/t-km):貨物1トンを1キロメートル運ぶ際のCO₂排出量を示します。欧州(EU)の中央値では17g/t-kmとなっており、トラック輸送(約111g/t-km)と比べて圧倒的な環境優位性があります。 


これらのKPIに、20フィートコンテナ換算単位(TEU)当たりのコストや温室効果ガス排出原単位を組み合わせ、ダッシュボードで一元管理する取り組みも進んでいます。温室効果ガス排出量の算定・報告には、ISO 14083に整合したGLECフレームワーク第3版が活用されています。

鉄道貨物輸送とトラック輸送の排出量・コスト比較

 

欧州の鉄道環境報告書によると、貨物鉄道の1トンキロメートルあたりのCO₂排出量は、大型トラックと比べて約75%少なく、騒音や渋滞、事故リスクなどの面でも、社会への負担が小さいとされています。
2025年の英国のコスト調査では、トンキロ当たりの平均コストは、鉄道輸送が0.036ユーロ、トラック輸送が0.046〜0.062ユーロとされています。鉄道輸送には、出発地・到着地と鉄道ターミナルを結ぶトラック輸送に追加費用がかかるものの、同調査では鉄道のコスト優位性が示されています。

ユーラシア・欧州における主要鉄道貨物ルート

 

  • 中欧班列(China-Europe Railway Express / CER)
    中国と欧州を結ぶ鉄道貨物ネットワークです。累計運行本数は10万便を超え、2024年のコンテナ輸送量(TEUベース)は前年比10%増加しました。また、南部ルートのBTK鉄道(バクー・トビリシ・カルス鉄道)の改良により、渝新欧ルートの重慶―デュイスブルク間の輸送日数が15日に短縮されました。
  • 北海・バルト海回廊(RFC #2)
    ポメラニア地方の港湾を発着する貨物や、自動車関連の貨物輸送を支える重要なルートです。
  • スカンジナビア・地中海回廊(ScanMed RFC #3)
    スカンジナビアとイタリアを結び、食品、木材、医薬品などの輸送を支えるルートです。
  • ミドル・コリドー(中央回廊:アゼルバイジャン・アラト~ルーマニア・コンスタンツァ)
    ロシアを経由せずに中国と欧州を結ぶ輸送の選択肢として注目されています。2025年には、コンテナを2段積みで運ぶダブルスタック輸送に必要な通過条件の確保が進んでいます。 

     

これらの回廊では、欧州共通の列車制御システムであるETCSレベル2/3の導入により、列車の運行間隔が30%改善され、国境を越える際の運行制御の引き継ぎも、運転士の操作なしで行えるようになっています。

鉄道貨物輸送の利用拡大を後押しする技術と政策

 

  • デジタルツインによる運航の最適化
    運現実の設備や運行状況を仮想空間に再現するデジタルツインを活用し、列車の運行枠の割り当てや、運行に支障が生じた際の復旧対応を最適化します。
  • IoT搭載貨車の普及
    貨車に搭載したIoTセンサーにより、輸送中の衝撃や温度のデータをリアルタイムで取得できます。
  • 環境配慮型の線路使用料割引(独・蘭で2026年より導入)
    低騒音の機関車やハイブリッド・水素動力の機関車を対象に、線路使用料の割引・還付を行い、環境負荷の低い機関車の利用を後押しします。
  • EU「貨物輸送グリーン化パッケージ」の推進(2023年~)
    2030年までに鉄道貨物輸送のシェアを50%拡大することを目指しています。国境を越える際の手続きの簡素化や、騒音の上限規制の共通化を進め、鉄道貨物輸送の利用拡大を後押しします。